2019年08月24日

横浜市の「 IP誘致宣言」について

 横浜市民ではないが仕事を通じて横浜市とは深く関わってきた。知人・友人も少なくない。そういう立場ではあるが今回の「IR誘致宣言」にはまったく賛成できない。
 また、どうにも気になるのが、推進派はもとより反対派でも「経済的には成り立つ」という前提で語られていることである。
 例えば、「儲けは依存症患者からの搾取であり、外資に持っていかれるだけ」といった批判を多く目にする。しかし、そもそも本当に「必ず儲かる」のだろうか? 一部の人々が主張するように「日本に創ればマカオに勝てる」などと考えるのは、楽観的すぎるのではないだろうか。
 「IR開発」の目的はカジノ解禁の突破口、「統合型リゾート」などというのはごまかしに過ぎないとする意見があるが、私はむしろ逆だろうと考えている。「目玉」あるいは「大義名分」としてカジノ導入を掲げているが、行政プランとしての本音は要するに五輪・万博で終りを告げるはずの、官主導の「大規模開発」を今後も続けることであり、そのためのネタの一つとしか見えない。
 「利権」を強調する意見もある。しかし、アメリカ政府の「市場開放要求」に応えるという側面はあるだろうが、筋金入りの外資がそんなに甘い利権をもたらすとは考え難い。やはり「利権」の中心的対象は国内の開発・土建業界であると見るべきであろう。つまり本当の目的は「開発」そのものなのだと。
 そう考えると、かつての「リゾート法」騒動と結局は同じ構造である可能性が見えてくる。もしも期待したほどの集客・売り上げが得られなければ、外資はさっさと撤退するだろう。場合によっては高額の違約金まで取って。そして後に残るのは巨大な廃墟と地元自治体に負わされた巨額の負債だ。北海道夕張市のように。
 他の都市はともかく「ヨコハマなのだから失敗などあり得ない」などと考えているとしたら、もう何も言うことは無い。
posted by Cheshire Cat at 13:03| Comment(0) | 日本の政治

2018年07月15日

政治意識の気になる傾向

 Quora という質問ー回答サイトがあって、私自身が投稿した回答の一部を Facebook ページでも紹介している。比較的高学歴、専門職の人々が多く参加していることもあって、本来は健全な知的好奇心に根ざした質問や、キャリアップの方法などに関する質問が多いサイトである。
 そこで最近気になる傾向が見えてきた。それは政治システムに関する質問で、下に示す2つの質問に代表されるような「政治家や議会の存在を否定する」タイプの質問が目立つようになったこと、そしてそれが比較的若い人々からの質問であることである。
 『政治家は増税したり、福祉を切り捨てたり、戦争を起こしたりして国民を苦しめます。世界中から政治家がいなくなれば幸福な世界になりますか?』
 『今の日本の政界を一掃し、古い慣習みたいなものやコネを取っ払い、年齢問わず有能な非政治家(経営者や学者、教授や博士、スタートアップの若者など何でもいいのですが)が、会社組織のような形態で政治をし、風通しをよくし、無駄を省いたら、何か変わりますか?』

 またこれらとは異なるが、国会での与野党の議論を「無駄」「茶番」などとする、あるいは普通選挙という選挙制度そのものを否定する、といった内容を含む質問も散見される。
 これは極めて危険な、そして恐ろしい傾向であると考える。ここには「国民主権」への無自覚と「面倒な議会制民主制度」への嫌悪、そして「賢者独裁」への憧れすら見えているからである。
posted by Cheshire Cat at 09:07| Comment(0) | 日本の政治

2018年02月28日

「働き方改革」と生産性の問題

「働き方改革」とは、誰の、何のための "改革" なのか?

 担当官庁である厚生労働省のHPでは、「働く方の置かれた個々の事情に応じ、多様な働き方を選択できる社会を実現」と、賛否はともかくそれほど奇怪なことが書かれている訳ではない。
 一方、首相官邸HPにある「働き方改革の実現」というページには、例によって、霞ヶ関官僚の "詭弁力" を最高に発揮した「個々にはきれいな言葉を並べながら、全体としては何を言っているのか解らない」と言うか「現実的に意味の有ることは何も言ってない」文章が並んでいる。
 ただ、その中で無視できないのは「働き方改革こそが、労働生産性を改善するための最良の手段」と言い切っていることで、ここまで断定されては検討しない訳にはいかない。

 「労働生産性」を高める具体的な方法としては、大きく次の2つが挙げられる。
 その第一は、イノベーション。まったく新しい、魅力的な製品・サービスといったものを創案し、他に先駆けて事業化することで新たな市場を開拓する、あるいは抜本的・革命的な技術革新を起こして、在来の製品やサービスであってもその生産・提供・消費のあり方をを劇的に変える、といったことで、付加価値=生産性計算の "分子" を増やす方法である。
 現在、世界をリードする先進国において「労働生産性」向上の核心となっているのは、圧倒的にこの「創造性」「イノベーション」である。
 例えば、アメリカ経済の高い生産性を牽引しているのは、アップル、アマゾン、グーグルなどの企業群であるが、そのすそ野には無数の創造的な起業家たちが群がっている。そして、さらにその基盤を形成しているのは、高い能力と意欲をもって世界中から集まる「人材」であり、高い研究・教育水準をもって世界に門戸を広げている大学群と、積極的な起業・創業を許し、サポートする社会・経済体制が、彼等の意欲の現実化を支えているのである。

 「労働生産性」を高める第二の方法は、生産現場の発展途上国への移転や、非正規雇用・派遣社員・外国人労働者を増やすことによって「人件費の圧縮」を図る、すなわち "費用" として把握される投入労働力=生産力計算の "分母" を減らす方法である。
 高度経済成長期からバブル期にかけて進んだ「生産方式の改善」によって、日本の製造業は確かに製品の質、生産効率において、一時世界の頂点に立っていた。
 日本企業の多くは、その後も世界の政治経済の構造的変化を無視して「改善・効率化」に走り続け、小泉政権以降の自民党政権も同様の考え方で労働者派遣法や出入国管理法の積極的な改変(規制緩和)を進めてきた。その結果、今日では自動車産業を中心に完全な「外国人労働者依存」の状態が生じている。
 しかし、生産・管理のIT化が一定のレベルまで進んだことで、同じ手順で同じ製品を作り続ける限り、国内生産の効率化・省力化は限界に近づいてきた。また、中国・インドなどの新興国の生産能力が向上したことで、在来の製造品では競争力も失われることとなった。すなわち、もう "効率的に働く" ことなどでは、日本の労働生産性の向上は困難になっているのである。
 また、このような政策は、若年層を中心に非正規雇用で働く人々の割合の異常な増加と実質個人所得の減少を招いている。雇用労働者の非正規化、残業代打ち切りなどによって人件費を削れば、個々の企業の「見かけ上の生産性」「利益率」は向上したように見えるだろう。しかし、多くの企業で同じことを行えば、結果的に低賃金労働者ばかりが増加して貧困化が進み、将来への不安も加わって消費不況を招き、GDPの成長が止まり、国全体としての生産性は下がってしまう。現在の日本はそういう状態にあるのである。

 今国会で審議中の「働き方改革」なるものは、まさにこれまでの政策の延長・強化に過ぎない。提案されている法案は、まさに「人件費をさらに削るための裏技」と言う他ないもので、国全体の生産性の向上に資することなどあり得ない代物である。
posted by Cheshire Cat at 02:19| Comment(0) | 日本の政治