この医師曰く、宣告された患者の中に「がっくり肩を落としたり、ぼろぼろと涙を流したりする。ショックでうつ状態になる人もいた」のだそうである。そこで質問。
それなりに権威があり信頼する "医師" という存在から死期を宣告されたら、ショックを受け、哀しみ、抑鬱状態になるのは当然である。そのように反応する人が居ることのどこに、何の問題があるというのだろうか?
またこの医師は「一方的な余命宣告は患者を傷つけるだけ」と主張する。それでは訊くが、「(死期が近いことを知らされずに)死んでしまった患者は傷ついてない」と、何を根拠に断定するのだろう。
臨終の間際に「早く告げてくれていたら、やれたこと、やっておきたいことがあったのに・・」と深く悲しみ、傷ついている患者がいるとは、全く考えないのだろうか?
それに、そもそも「一方的でない余命宣告?」というのがあるのなら是非教えてもらいたいものだ。
さらにこの医師は、余命宣告の期間が「結果と一致しない」と言っているのだが、「最悪だと○○、様々な治療が上手く効いてくれれば□□まで期待できる・・・」といった幅をもたせた説明をするのが通常であろう。「○ヶ月です」などと断定的に宣告する医師が居たらそれこそ問題ではないのか。
一体どのようなデータをもとに "3割" と言うのだろう。記者はそのデータの詳細をきちんと読み、理解したのだろうか。
最後に、もう笑うしかないのは「最善を期待し、最悪に備えましょう」という "お言葉" である。
誰だって「普段からそう思って」日々生きているのである。そんな当たり前のことを偉そうに "教示" できる人物こそ、何とも奇怪な存在と言う他は無い。そこで吹き出さなかった記者の頭脳と、このような記者を抱える朝日新聞の将来も大変に心配である。
念のために、
この記事のもとになったインタビューが遥かに長時間、多岐にわたるものであり、医師が実はもっともっと奥の深い、医師として人間として考え、悩み抜いた上での意見を真摯に語ったのだとしたら・・・。それが、能力不足の記者のために、このようなひどい要約記事になってしまったのだとしたら・・・。この医師には申し訳なく思う。しかし、この記事を読む限りにおいては私の見解は変わらない。
進行がんの余命宣告は必要か
石塚広志
2016年7月6日06時00分
進行がんであることがわかると多くの患者は医師にこう聞くそうだ。「あと、どれくらい生きられますか」。日本医科大武蔵小杉病院の勝俣範之教授(腫瘍(しゅよう)内科)は「そこで医師は『実は○カ月です』と言ってはいけない」と余命宣告の廃止を提唱する一人だ。
かつて勝俣さんも患者の強い希望で伝えることはあったそうだ。だが、悟りきったような聖職者、あるいは度量のありそうな社長や政治家であっても、具体的な余命期間を告げられると、がっくり肩を落としたり、ぼろぼろと涙を流したりする。ショックでうつ状態になる人もいたという。
勝俣さんは「一方的な余命宣告は患者を傷つけるだけ」と指摘する。さらに医師の告げる余命は当てにならないというデータもある。勝俣さんが、自身を含む医師14人の担当した進行がん患者75人の余命予測を検証したところ、実際の期間と一致したのは約3割にとどまったという。
医師がいくら「不確かだ」と強調しても、患者は数字にとらわれる。
勝俣さんは余命宣告の代わりにこう言うそうだ。
「最善を期待し、最悪に備えましょう」
http://www.asahi.com/articles/ASJ7561JPJ75UBQU009.html?ref=wmailm_0708_21