2016年12月09日

留学生と言う労働者の存在

 世の中のルールやそれに絡む出来事には「本音と建前」があると言うが、今世の中で進行していることの中には、本音と建前などというレベルで片づけることのできない、片づけてはならないことがいくつか起きている。その一つが「留学生という労働者」の存在である。
 12月7日発行の沖縄タイムス紙に次のような「社説」が掲載されている。

社説[留学生旅券預かり]法令順守の意識高めよ(抜粋)
<アジアなどの外国人留学生を対象にした本島南部の日本語教育機関(日本語学校)が、学生の旅券(パスポート)と健康保険証を預かり、管理していたことが分かった。ネパール出身の学生に対しては、一時、入管難民法で本人の常時携帯が義務づけられている在留カードも取り上げていた。>
<法務省の福岡入国管理局那覇支局も「たとえ本人の同意があったとしても、学校が旅券や在留カードを預かるのは人権侵害行為にあたる」と指摘する。>
<学校側は「失踪や犯罪利用を防ぐため」だと言い、「きれい事ばかりでは学生の管理ができない」と反論する。>
<昨年だけで県内の日本語学校から50人以上の学生が失踪したといわれる。
 留学ビザの期限が切れた過去1年間の不法滞在者の発生率が全学生の5%以上の日本語学校は、法務省から「非適正校」の烙印(らくいん)を押され、ペナルティーとして「適正校」と異なる扱いを受ける。
「数人の行方不明者が出ると(学校経営にとって)死活問題になる」のだという。>

 なかなか的確に、学校側の「本音」と「現実に起きていること」をとりあげている。ところが、記事の最後が以下に示すような呆れるほど見事な「建前論」で締めくくられているのが何とも残念である。
<留学生は大学や大学院、高等専門学校、日本語学校などに通いながら、週28時間の範囲での資格外活動(アルバイト)が認められている。これらの留学生が安心して教育を受けるには、宿泊施設や相談窓口の充実など受け皿の整備が欠かせない。>

http://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/74605

 教育現場の経験的印象では、アジアからの留学生は大きく3つのタイプに分けられるように思う。
 タイプAは、言うまでも無く真面目で優秀な学生たちである。
 一方タイプBは、始めから規定を無視してアルバイトを掛け持ち、明らかに勉強よりも「労働」が生活の中心になっている学生たちである。
 そして、その移行形であるタイプC。
 C1は、当初はAであったのに、母国からの送金や日本国内での支援が何らかの理由で途絶・縮小したことで経済的に行き詰まり、心ならずもBに移行してしまう学生たちである。
 またC2は、意欲をもって来日したものの、勉強に付いて行けなかったり学校生活に馴染めないといった理由で次第にドロップアウトし、アルバイト中心の生活になる学生たちである。

 社説で言う「受け皿の整備」が有効なのは、明らかにタイプAとタイプCであり、タイプBの学生に関しては問題の本質がズレているとしか言えない。
 何故かと言えば、タイプBの学生達の殆どは「元々働く(金を稼ぐ)ことを目的に来日している」からである。また、彼等を「労働力」として受け入れ、 "活用" している労働市場が存在するからである。
 政府や教育機関の「建前論」の陰で、タイプBの留学生達は一定の(無駄な)学費を自ら学校に納め、さらに「学生バイト」ということで、低賃金の社会保険も適用されない状況で、現実には立派な "戦力" として働いているのである。
 このような「留学生労働市場」の存在は、実態として留学生ビザを利用した非正規労働者の輸入となっているのであり、国全体として見れば、一種の労働搾取であるとさえ言える。

 アルバイト漬け(確信犯)の留学生や、集団で失踪する留学生を増やさないための対策は、正反対の2つしか無い。
 第一は、ハードルを上げてタイプB(化する可能性のある)学生を "入国させない" ことである。しかしそれは留学生を増加させるという国の基本方針にも反することであり、実際そんな「判定」をしている余裕はどこにもない。
 第二の方法は、特定の専門技術をもたない若者でも「労働者として正規に入国させ・管理する」制度を創設することで、彼等を本来の「留学生」とは分離することである。
 国際的な批判と競争の下で改善を迫られている「企業実習生」制度も含めて、外国人労働者の受け入れについて、現実を直視した実践的かつ真剣な検討が必要となっている。
 
posted by Cheshire Cat at 23:56| Comment(0) | 世界と日本